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雑記帳「感懐」

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グランドひかり引退のニュースを見て

 先日、東北新幹線が八戸まで延伸したそうですが、それに先だって11月23日に新幹線車両の歴史に残る名車が引退しました。

 新幹線車両と言っても、走行する路線や車両のグレードによって様々な形式があり今回引退したのは100系V編成と呼ばれるものです。「グランドひかり」の愛称で親しまれていました。新幹線車両は今でこそ百花繚乱の様相を呈していますが、1964年に東京−新大阪間に新幹線が登場した際にデビューした0系と呼ばれるまぁるい鼻の車両だけが新幹線と呼ばれていた時代は非常に長く、21年後の1985年、満を持して登場したこの100系は当時としては近未来的な鋭いスタイリングと新幹線初の2階建て車両を2両連結、車内設備の格段のグレードアップなどあらゆる点でそれまでの0系から進化しており、停車駅でホームに入るたびに子供達の羨望のまなざしが向けられたものでした。

 「グランドひかり」というのはその中でも特にJR西日本が独自に開発した2階建て4両(グリーン車3両+食堂車)連結の、まさにグランドな、巨大な新幹線で、連日大量に流される石坂浩二さんのテレビCMで認知度は一気に高まり、新幹線を車両の種類で指名してキップを購入するという概念が生まれたのもこの時でした。

 その後、東海道山陽新幹線に、300系、500系と新しい形式が登場し、そのたびに最高速度が引き上げられました。そんな中でも「グランドひかり」は2階建て4両の魅力に支えられて本数を減らしながらも博多−東京間を往復していましたが、高価なグリーン料金を払ってくれるビジネス客の「のぞみ」へのシフトと車両、特に2階建て車両の老朽化は急速に進行し、「のぞみ」を優先して通すために限られた停車駅で「こだま」「ひかり」を巧みに停車させなければならないダイヤグラムの複雑化とも相まって、乗車率が低く、現在の水準からすれば足の遅い「グランドひかり」は次第にじゃまな存在へと変わっていきました。

 末期の「グランドひかり」は見るも無惨な姿で運用されていました。真っ白い地色に鮮烈な青いラインだったはずの車体は黄ばんでしまい、眺望がウリだった2階建てグリーン車はシートやフロアカーペットのモケットのほつれも修繕されることなく、ハイグレード化が進んでいる在来線特急の普通車と比べても見劣りする始末・・・。食堂車の営業もなく、何度と無く「のぞみ」に道を譲るダイヤグラム。

 私は鉄道旅行が好きです。しかも、鈍行列車。お金がないから・・・という理由もあるのですが、特急で駆け抜けていくことによって見落としてしまう風景や、開けることのできない窓ガラスでは見知らぬ土地の空気環を感じることができないから・・・というのが私が付けたかっこいい理由です。

 つい先日も日豊本線を都城まで下り、吉都線、肥薩線で九州山地を横断して八代から博多経由で九州一周を鈍行列車だけで行いました。大分で3時間接続待ち、吉松で2時間接続待ちと、普通の人なら気が遠くなってしまうであろう長時間の待ち時間も、街をブラブラしていればあっという間です。駅で列車を降りるたびにたくさんの新しい出会いや発見が待っているかと思うと、わずか5分で次の列車が発車するタイミングの取れた接続が恨めしくもありました。

 けれども、実は数年前にも同じルートを通ったのですが、その時はよれよれだった普通列車も、今回はお年寄りしか乗車しないような末端の路線まで近代的で軽快な美しい車両と入れ替わっていて驚きました。窓の外の風景は確かに山村・漁村なのですが、乗ってる車両は毎日乗っている通勤電車とそっくりのアルミむき出しの無機質な車内・・・。何となくローカル線で遠出をしている価値が半分奪われてしまったような気がしました。

 「グランドひかり」が無くなるのも、ローカル線に都会の通勤電車風の車両が走り始めるのもコスト削減とスピードアップ、そんなメリットを考えると納得できますし、声高に「古い物を残そう」と訴えるつもりはありませんが、やっぱり、グランドひかりの車窓風景を眺めながら食堂車でソーセージをつまみつつ飲むビールはおいしかったし、ちょっとやつれた電車のデッキに魚の臭いのする大きな風呂敷包みが積んであるのはいかにもローカル線の雰囲気にマッチしていて好きでした。

 先を急がず、人とふれあい、鳥の声を聞き、一木一草に心動かす。自分の知らない街で、自分の知らない日常が日々営まれている、そういう当たり前ことを改めて心で感じ、些細な発見にも感動と感謝する、そんな移動することそのものを旅の楽しみと感じられるような移動手段の選択枝が次第になくなってきているなぁ、と、そんなことを「グランドひかり」引退のニュースを見ながら思いました。

2002/12/04


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