服部明子の平家物語研究室

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■ 「能登殿最期」の章で人物の分析をさせる中学の話

能登殿・新中納言・義経・平内左衛門についてです。
<教経・知盛さま・義経・家長>です。

 能登殿は26歳にして酒豪というかアル中でそうなった原因は何だろう?と非常に彼のトラウマに興味があります。あの時お酒が入ってなかったら、もしかすると、義経に追い付いていたのだろうか?とか。

 人物の対比に於いて教経殿は豪快・豪傑に描かれているけど本当はどんな人だったのか?実は大恋愛の果ての何かあったのかしら?と想像が駆け巡ります。

 知盛どのが病弱だったと知って壇の浦での入水の意味が狂ってしまって私自身の考えが揺らいでしまいました。

 重衡どのは明かるく健康な貴公子のイメージです。頭も良いし。 父・清盛に可愛がられたって思います。

維盛どのは線の細い・上品な・いかにも育ちの良い貴公子のイメージですが妻や子の事は考えなかったのかな?とは思いますが妻の実家が面倒見てくれるのだから自分はフダラク信仰で消えていいのだ、と思ったのかしら?とか思います。

 この人の弟の基盛どのというのが母の身分が低かったけどなかなかの武将だったようです。でも24歳あたりで病気で亡くなって息子が「行盛」さんですね。行盛はなかなかの歌詠みで、資盛どの有盛どの兄弟と一緒に入水したと書かれていますね。

 平家物語の人物が現代に通じる青年の悩みに重なって本当はどういう人達だったのだろう? と夢を描いてしまいます。心理学で平家物語の登場人物の心を解説してくれるHPがあったらいいな、 と思っています。

 続いて、実際の中学生の意見を紹介します。新しい日本人がどう能登どのや義経を捉らえているか実に興味深いです。

能登殿、平教経について

Aさん : 自己主張が強い人やと思います。今日死ぬって思うたら立派な服来てるし、大音声上げて自分が目立つようにしてるから。

Bさん :  それは違うと思います。目立とうと思った訳じゃなくて最後まで立派に戦って死にたいと思ったからだと思います。

Cさん : 立派に戦って死にたいなら、途中で太刀や長刀を捨てる必要はなかったんじゃないですか?

Bさん : 判官(大将軍)を逃がしてしまって、新中納言のいう、いい敵はいなくなったから、最後に動きやすい格好になったんじゃないですか?そうすれば敵も近寄ってくると思ったのでは?

Dさん : 頼朝に文句を言いたくて生け捕りにされるためにわざと脱いで敵を安心させたのかなと思いました。だから自己主張というよりは、よく考えて行動するタイプじゃないかな。

Eさん : ちょっとわからないんですけど、自己主張ってどういう意味ですか?自分ばかりが目立とうとすることですか?自分の信念を持っていると言う意味ですか?私は後の方の信念を貫くための行動だと思ってますが、そういう意味ではよく考えて行動するというのも矛盾しません。

Aさん : 自分ばかりが目立とうとすることという意味で話しました。

Fさん : 目立とうとすること・・・信念を貫くというんではなくて新中納言の命令で仕方なく動いてるのです。。。。だから自己主張の強い人ではありません。新中納言に良い敵か?と言われたらすぐ行動を変えたんだから信念でも自己主張でもなく、単純でバカ正直なんじゃないですか?

 以下、中納言に言われて取った行動でも、もめて時間が・・・(-_-)反論につぐ反論をうまくまとめる能力が教師の側に不足しているため時間切れしてしまって大変でした。きちんと本文を押さえていかなければならないっていうのに興奮した生徒達は言いたい放題・・(^_^;) 最終的には熱血、直情型、バカ正直でお人好しな好人物としてまとまりました。

新中納言、平知盛について

あ : この人はいくら負けるとわかっていても戦乱のさなかに「ひどく罪を作らないで」というぐらいだから知的で冷静なタイプだと思います。

い : 「平家の最期を見届けた」といって死ぬぐらいだから、責任感のある人だと思います。

中納言はこの文章では二カ所しか描写がないので反論は出ず、知的でクールなリーダー タイプで大体一致しました。

判官、源義経について

ア : かなわないと思ったらすぐ逃げるし、正面には立ったものの能登殿と組まないなんてずるいです。

イ : ずるいのではなくて賢いのです。臨機応変に動ける人物なのです。

ウ : 臨機応変であるということとずるい人物だということは矛盾しないと思います。

エ : ずるいというと違う気がします。源平合戦では源氏は勝っている側だから、能登殿のような死を覚悟して向かってくる相手に立ち向かう必要はないのです。

ア : ずるいに対する反論になっていません。

以下は担当教師のコメントです。

『私の好きな義経が「ずるい」人物に。。。。(ーー;) この章では人物像を考える要素が少なすぎるのでやはり難しかったかもしれません。こちらから「ひよどり越え」の話など補足説明をしましたが、「ほら奇襲作戦なんて、やっぱりずるいやん!」・・・ああ、しまった!!!この子達の何人かは義経をずるい人物と思って大きくなるのね(T_T)  てなわけで彼は戦略家で臨機応変に動けるちょっとずるい面もある人になってしまいました。


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